Voices of SUIZAN
Maker's Voices
#002
五十嵐刃物工業株式会社 様
職人の手が生み出す、SUIZANの切れ味
— 三条の刃物職人が語る「ものづくり」の現場と想い —
SUIZANはのこぎりから始まり、今ではガーデニング用品も多数展開しています。その中で、刈込鋏やロッパーといった園芸用刃物の製造を担っているのが、五十嵐刃物工業株式会社です。
80年以上の歴史が紡ぐ技術と伝統
五十嵐刃物工業株式会社は1943年に創業。80年以上の歴史を誇り、新潟県三条市で確かな技術と伝統を受け継いできました。
五十嵐社長はこう語ります。
「もともと父がこの会社を経営しており、高校を卒業した18歳の時にこの世界に入りました。製造の現場で刃物作りの基礎から学び、研ぎや調整などの工程を経験しました。1996年に社長に就任し、今日まで、現場感覚を持ちながら会社を率いてきました。
創業以来「切れ味」と「使いやすさ」を両立させるものづくりにこだわってきました。職人のために職人が作る道具を多くの人に使ってほしい。一丁一丁丹念に真心を込めて製造することを大事にしています。」
刃物づくりの世界に入ったきっかけ
長い歴史の中で、確かな技術で高品質な製品を製造する同社。現在その製造責任者を務めるのが製造部長の田辺さんです。
五十嵐刃物工業株式会社:田辺さん
田辺さんが刃物の世界に足を踏み入れたのは、二十数年前のこと。前職とはまったく異なる分野からの転職でしたが、幼少期から家の周辺には鍛冶屋や町工場が立ち並び、通学路では金属を打つ音が日常にあったと言います。
田辺さん「父から見せられた大工道具の美しさに心を奪われ、『こんなに格好いい刃物があるのか』と強く印象に残ったことが、刃物への興味を深めるきっかけになりました。」
長年の経験に基づく技術
田辺さんは現在、製品の最終調整を中心に担当しています。特に刈込鋏の「あいば」と呼ばれる刃同士のすり合わせを一本ずつ確認・調整する作業は、仕上がりを大きく左右する重要な工程です。刃付けや研ぎなども行いながら、複数の工程を並行して進めています。
刈込ばさみの製造工程
SUIZANの刈込ばさみがどのように作られているのか、製造の工程をご紹介します。
1. 鍛造
高温に熱した金属を叩いて形を整える作業です。職人の手による熟練の技とこだわりが、最高品質の刃物を生み出します。
2. 焼入れ・焼戻し
金属に硬さ・粘りを引き出す為の熱処理。材質によって最適な温度やスピードが要求されます。
3. 研磨
刃先を鋭くし、刃物の切れ味を最大限に引き出すための重要な工程です。
4. 刃付け・調整
滑らかな動きと正確な切れ味を生み出すための、はさみの刃同士の噛み合わせを最適にする作業。現在でも機械では再現できない技術です。
5. 刃の仕上げ
見た目の美しさとともに、長く使える品質を保証するために、刃の表面を丁寧に仕上げています。
6. 洗浄・梱包
汚れを落とし、油通しをして、丁寧に包装して出荷します。
田辺さん「機械も使いますが、手作業が多く、感覚でしかつかめない部分も多い。経験を積まなければ身につかない技術です。」
習得には時間を要し、およそ5年で基礎が身につき、10年ほどで一人前と認められるといいます。田辺さん自身も入社当初は失敗や怪我も多く、たくさんの苦労があったそうです。
三条で学んだ手仕事の技
三条は古くから鍛冶の町として知られ、「三条鍛冶道場」という研修施設もあります。田辺さんもここに通い、熟練職人から4年間、鉄の扱い方や昔ながらの鍛冶技術を学びました。
田辺さん「会社では見て覚えることが多かったですが、道場では基礎から教えていただけたのは貴重でした。鉄をつかむはさみと金槌だけで刃物を作る、そんな原点の技術です。」
こうして培った技は、新製品や試作品の制作にも活かされ、機械加工が難しい部分を手作業で補い、お客様からの要望に応える製品を作り上げています。
日本・燕三条
道具作りに対するこだわりは「全部」、
とにかくみんなに使ってほしい
田辺さん「「良い道具」とは、使い手が喜ぶ道具だと思っています。作り手の自己満足で終わってはいけません。切れ味はもちろん、見た目の美しさも重要です。一般の方が見ても「きれいだ」と思えるような仕上げを目指しています。
私は修理も担当していますが、『直してでも使い続けたい』と言われることは、作り手として本当にありがたいことです。」
つい最近も、修理したお客さまからのお礼の手紙が届いたそう。
五十嵐さん「愛着をもって使える道具づくりをテーマにしています。一度手に馴染んだ道具は、古くなるまで、そして最後まで使い続けてもらいたい。 私たちが昔から作ってきた道具の中には、今も現役で使われているものがあります。最後まで使い続けられ、道具としての役目を全うできる製品を追求していきたいと考えています。」
守るべき伝統と必要な変化
伝統を守る一方で、時代の変化にも対応しています。
田辺さん「以前は鍛冶場に女性が入ることすら少なかったですが、女性に向いている作業もあります。やれる人がやればいい、というのが私の考えです。
他にも、若い職人たちにはできるだけ早く作業を経験させるよう心掛けています。昔は「まだ早い」と言われ、なかなかやらせてもらえませんでした。でもやらないと覚えられない。だから若い人には失敗を恐れず挑戦してほしいと思っています。」
五十嵐さん「信頼される良いものを作り続けるという伝統は守りつつ、今の時代に即した道具作り、ものづくりを心掛けています。ユーザーの声を聞き、引き出しを増やしながら新商品開発に役立てたいと思っています。」
燕三条という地域で製造する意味
三条は製造と販売の距離が近く、情報や技術が集まる地域です。
五十嵐さん「新しい企画や商品も自社だけでは作れないものでも、地域一体で作ることができます。地域全体で考えれば、作れないものはないんじゃないかなと思ってます。」
田辺さん「この環境を活かしながら、今後はナタや刈込鋏だけでなく、ナイフや包丁などにも挑戦したいですし、日本刀は憧れであり、いつか形にしたい夢のひとつです。」
未来のユーザーへのメッセージ
五十嵐さん「はさみには葉刈用、太枝用、狭所用など、用途に合わせたさまざまな種類があります。切れ味を重視するなら、日本の伝統的な鋼付けを施したものを選び、メンテナンスをしながら長く使うのも良いでしょう。また、切った木を傷めないよう工夫されたものなど、さまざまな作り方がありますので、目的に応じて選んでいただきたいですね。」
田辺さん「日本の刃物だと、刀とか包丁が有名ですが、はさみの切れ味もいいことをぜひ知っていただきたいです。」
職人としての哲学
最後に「職人とは?」と尋ねると、田辺さんはこう答えました。 田辺さん「常に80点を目指すことです。100点を取ってしまうと、その先がなくなってしまう。だからずっと100点を目指し続けられるように、あえて80点で留めるんです。」
五十嵐さん「私たちの強みは、熟練の技術と柔軟な発想を併せ持っていることです。これからも現場の声を大切にしながら、日々楽しく、新しい製品や価値を生み出していきたいと考えています。」
その言葉どおり、SUIZANの刃物には、より高みを目指し続ける職人たちの情熱が込められています。SUIZANブランドとして、世界中のお客様に「本物の切れ味」を届け続けます。